トゥクトゥク・ダッシュ
    結成1周年記念 インタビュー



私はトゥクトゥクなる乗り物に乗った経験はない。
アジアへ旅した子から「トゥクトゥクの運転手にぼったくられた」「油断したらどこ連れて行かれるか分からん」など聞いてきたもんだからトゥクトゥクは恐怖の乗り物として私の中では今でも君臨している。だけど、トゥクトゥク・ダッシュとなれば別腹。こんなに楽しいものはない。そんなトゥクトゥク・ダッシュのバンマス“よねっち”に話を聞いて参りました。(By 遊)

<遊>トゥクトゥク・ダッシュという名前になって1年?なのかな?
<よね>うん、俺、東京に来てから色んなバンドのサポートやってて、その関係で知り合ったミュージシャン達の中で、まぁ気の合った人達を寄せ集めて、トゥクトゥクの前身となる自主ユニットを立ち上げたんやけど、初めてトゥクトゥク・ダッシュという名前に変えてやったのが去年の今頃(2004年3月)。改名して1年やね。
<遊>じゃあ、改名記念(笑)。
<よね>そうそう。ちょうど、ファーストCDを作り出したのが去年の1月で改名が3月。そん時はバンド名無くって、バンド名を何にしよう?とか言いながら録り始めてた。
<遊>そん時のメンバーって・・・
<よね>その頃のボーカルはチャミで、俺はギター・ベース・マンドリン・サズ全部やって・・・それで、その頃からキョーコちゃんは居て、あとはムトゥ。ドラムは、るーずぱんてぃっていうバンドのトモネちゃん。ライブではモリっちがベースで、アッキーさんはそのもう少し前からライブには参加してくれてたかな。
<遊>よねっちは今までトゥクトゥク・ダッシュをするまでに沢山のバンドをしてきてるのを知っているのだけど・・・それを経て、今もバンドをしてるということはもちろん音に対しての思いや情熱や表現手段としても色々あると思うのですが、トゥクトゥクでは何を表現したいと思ったのかな?
<よね>やっぱしね、やっていきたいと思ってるのはスタンダードな音楽。スタンダードっていうのは、ここ10年くらいの中で1・2年流行ったなあというのではなくって。例えば80年代に流行った音〜みたいなものでもなくて、100年・200年スパンで考えてる(笑)
<遊>100年・200年のスパンで考えられるスタンダードなもの?それって、今の音楽にあるかな?
<よね>あのね、例えば江戸時代末期、開国して海外の文化がダァ〜っと入ってきて、それに追いつけ追い越せみたいな感じで吸収していった時代があって・・・音楽に限らず文化総合的に。で、その頃のアメリカ人・イギリス人などが持ってきた音楽の源流にあるのがアイリッシュ・トラッドやったりするねん。それに日本語の歌詞を乗せて替え歌にしたのが、明治・大正の流行歌になったり。
<遊>ホォ〜、そうなんや(感心)。
<よね>俺がテーマとしたい源流はそこにあって。俺は趣味的にアイリッシュ・トラッドとか好きなんやけど、ああいう音楽を聴いて何で懐かしい気分になるんやろうと考えた時に、日本人のルーツとして繋がりが多いことが分かった。日本の童謡や唱歌の源流をたどると、開国当時に現れたアメリカ人の音楽の素であるスコットランドやアイルランドの民謡に結びつく。それが不思議と日本の風景とか季節感にも合ってたりする。明治時代に西洋から入ってきたヨナヌキ音階(ドレミファソラシドを頭から数えて四番目と七番目がない音階)って、実は日本古来の民謡音階にもかなり近くて、色んな面で共通点がある。それがもう100年以上受け継がれていたりする。そういう原点に返った音楽をやりたいと。
<遊>追求すると歴史的なとこまでいくよね。さすがやっぱり追求するね!
<よね>やっぱりすごく大事にしたいのがね、何回でも繰り返して聴ける音楽をやりたい。単なる一時的なものではなくて、10年経っても繰り返して聴けるようなもの、その時に聴いても恥ずかしくならないようなものをやりたい。時代性とか関係なくて、普遍的な良さを持ちながら新しいものを追求していく。流行りのサイクルなんかも無視して、いつ聞いてもOKな、懐かしいけど新しいスタンダードなものをやりたい。ほんまに革新的なことをやる人っていうのは歴史を知ってる人やと思うから。
<遊>おお!!!名言やね。すごいね。確かにそうかもしれん。おお、すごいね(笑)。
<よね>今の時代をよんで音楽をするやり方もあるけど、まず何をやりたいか考えた時に繰り返し聞いて自分の生活の中で聞き続けられるものがしたいね。流行り廃りでもなくて、売れる売れないでもなくて、人の中にどれだけ沁み込んでくるのか…そこを大事にしたい。
<遊>だから(トゥクトゥク・ダッシュ)聞いてると懐かしくて切なくて郷愁を感じるのやね。そういう思いでよねっちがしてるというのは、他のメンバーはどうなんだろう。
<よね>それは自然に波長があった人達で自然にしてるからね
<遊>すごい(良い)波長よね。
じゃあ、せっかくだから、よねっちから見た他のメンバー像を教えてください(笑)。

<よね>そやね(笑)。誰からいこうかなぁ。まずキョーコちゃん(アコーディオン)は、音楽家なんやけど、旅行であったり、写真であったり、物書きであったり、ものすごく趣味が多彩で。感性が豊かで一つ一つの描写が丁寧。そういう懐の広さがものすごく演奏にも表れてて、簡単なメロディを弾く時も音だけでなく、後ろにある情景とかが見えてくる。
<遊>景色が見えるのね。
<よねっち>うん。それと、音の会話を一番楽しめる人やね。欲しいところに欲しい音が確実に返ってくる。音楽の趣味やら行った国やら共通点も多いせいなのか?俺がどんなにテキトーな玉投げても、いつでも確実にパスを返してくれる感じ(笑)
<遊>じゃあ、次は・・・。
<よね>てっちゃん(ベース)はね、バンドの中の演奏であったり人間関係のコミュニケーションにもとても気を配っている人で、練習をしていても冷静に聞いていて色んな意見を言ってくれる。だからベースとしてもそうやし、他の楽器の一つ一つの視点から見たり、人間関係の波長もとても鋭く見ている。気配りが出来て、人の和を保っていくのがとてもうまい。その中でとても良いグルーヴを作ってくれる。ほんま、リズムの中心。
<遊>ほぉ。なるほど。じゃあ次は…。
<よね>NHK(日本変態協会)会員、リーモ君はほんまにギターうまい。本職はエレキなんやけど、ロック以外のジャジーなものを弾いてもうまい。うまいギタリストがよく陥るパターンで、それだけすごいことが出来ると、コード・ストロークとか簡単な音に対する重要性が分からなくなる人が多いんやけど、リーモ君はそうじゃない。リズムギターって一見目立たない役割ではあるんやけど、基本的なことをきっちり的確にやることの重要性を完璧に知り尽くしてる人やから、一発でもセッションした時に違和感無く入ってこれる。それが彼のすごいところ。
<遊>じゃあ、次はアッキーさん。
<よね>アッキーさん(ピアノ)とは何だかんだいって付き合いが長いねん(笑)。普段はソロ・アーティストで、たまに大所帯バンドに加わってもらってる感じ。最近すごく思うのは、大所帯での楽しみ方や自分のポジションを確立してる。ものすごく良い味付けをしてくれる。ソロ・アーティストとしての色も出しながらバンドの1コマとしてやってくれるところがすごく良い。だから今回、アッキーさんのピアノとコーラスはものすごくフィーチャーしてます(笑)。
<遊>次は、誰だ。
<よね>アラビア〜〜タ〜〜〜(ムトゥ・アラーター)。(爆笑)
<遊>ああ、アラビアタ。フフフ(笑・・・ランチメニューを見ながら)。
<よね>ムトゥ・アラーターは、今トゥクトゥクで一番熱いオトコやからね(笑)。バイオリン弾いてる人って、俺から見てとても我が強い人が多いイメージがあって、早く弾いたら勝ちや〜みたいな(笑)でもムトゥはそうじゃなくって、もちろん早弾きも出来るんやけど、長い単音をツゥーっと弾くだけでもすごく感情が出るんよ。感情が豊かで暖かい。押し付けがましくなく自然に沁み込んでくるような音。バンド・アンサンブルの中でのバイオリンを凄く熟知してる。あと、あんなにイジリ甲斐のある男はおらん。フフフ。
<遊>でも、ムトゥはモテるよね。
<よね>うん、かなちゃんはいっつも「ムトゥをお姫様抱っこしてウチに持って帰りたい〜」って言ってます(爆笑)

<遊>えと、次は、打楽器。
<よね>のり原人。ほんまに男らしい音を叩き出してくれる。場の空気のつくり方とか、演奏だけじゃなくて色んな面に関してトゥクトゥクのエンジンみたいな役割で色々進めてくれる。1つのものをつくっていく、櫓なり柱なり、そういう役割をものすごくわかってる。協力してくれる姿勢がものすごく強い。ほんまに、のりちゃんの人間性がよく表れてるねん。彼は異文化交流的なこともすぐ出来る人なので、そういう意味でもバンドの中での人間関係やグルーヴを作り上げていくのがものすごくうまい。演奏がうまいのもそれに繋がるなあ。
<遊>そして・・・。
<よね>唯一の正式メンバー、相方、かなちゃん(ボーカル)やね。かなちゃんは、俺とほんまに正反対の性格で、一番、俺に無いものを持ってる人。やっぱし、柔らかくてあったかいんやろうね。<遊>それは、よねっちが冷たくて厳しいってこと?(笑)
<よね>俺は冷たくて厳しくて情け容赦無いで〜(笑)。それと正反対の役割を担ってる人やなぁ。俺は企画とか考えるのは好きなんやけど、それを人に発していって、楽しませて和ませるのは、かなちゃんみたいなタイプ。一緒に組んでおもしろい。かなちゃんは、頑張って格好つけてる感じが無いのに充分存在感があるというか。それが無いから逆に自然に伝わってくるのかな。

<遊>本物のトゥクトゥクで例えると…よねっちは、ハンドルでしょう。皆は…。
<よね>ハンドルがかなちゃんで、アクセルが俺なんかなあ?
<遊>フム。ホウホウ(笑)。お客さんが運転してたりして。
<よね>そりゃ言えてる! みんなで訳分からん世界に連れてって欲しいなあ(笑)


●インタビュアー・プロフィール

遊 こと ニシタニユウコ
 某雑誌にて、ライターもどきを短期間経験。その後、地下潜伏。
 現在は、地下潜伏から浮上し、気ままに物書きをしている、うお座。
 最近、エンゲル係数高い。昨日、銀座の花ちょうへ行った。



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