闇夜のピラミッド・クライム
 ついにその瞬間はやってきた! 今回の旅のメイン・イベント、ピラミッド・クライム。夢にまで見た、あのクフ王ピラミッドの頂上を完全制覇だぁ!!

 1998年1月2日午前4時30分、よねっち含む登頂隊4名はピラミッドの聳える麓の町までタクシーをとばす。メンバーの内2名は昨日見事に失敗しており、その雪辱のためか異常にテンションが高い。因みに昨日は19名挑戦したが(何故か殆ど日本人)、「元旦初日の出」が日本人にとってスペシャルな事を知り尽くしているエジプト警察の厚い壁に阻まれ、結局6名しか成功しなかったらしい。隊員の中には、ポリスに捕まり牢屋にブチ込まれ金を巻き上げられながらも、その牢屋の中で記念撮影に成功した勇者もいたようだ。

 さて、我々はどのルートで挑もうか・・・ルート1は一番安全そうだが砂漠横断は砂に足を取られてキツそうだし遠回りだ。ルート2のゴルフ場潜入は最短距離だが、犬に襲われる可能性(大)。
 ルート3の民家迂回コースは一番警備が厚い・・・少々迷ったが、結局ルート3を選び突き進む。民家迂回は意外に楽だったが、A地点の砂山が予想以上に高く、急斜面で砂に足を取られながら登らなければならないので、とてもキツかった。砂山を登りきった所で警備の様子を窺う。暗くて良く見えないが、確かに気配を感じる・・・しかも厄介な事に、奴等はライフルを持っているのだ。だがここまで来て怯んでいては話にならない・・・犠牲者が出る可能性もあるが、B地点(ピラミッドの角)までの数百メートルを一気に強行突破する以外方法は無いようだ。
 それにしても・・・「俺達は“これ”に登るのか!!」 漆黒の闇の中で押し黙る巨大なピラミッド。まるで“眠ったフリ”でもしているかの如く不気味な沈黙が、我々の緊張を煽る・・・疲れて息が上がってる上に、鼓動が更に早くなる・・・・・・。だが・・・行くぞ!!

 5・4・3・2・1・・・GO!!

 デコボコの地面に足を掬われコケそうになりながら、力の限りダッシュだぁーーー!!
追っては来たのか? あれ、?!予想外・・・誰も追って来ない。何故だかよねっち登頂隊は難なくB地点潜入に成功したのだった。しかしまだまだ油断は禁物。慎重にC地点(砂漠側のピラミッドの角)まで進み、そこから一気にヨジ登るのだぁ!!
 巨大な岩々を1段2段と必死で這い上がりながら、直接触れる事により改めてとてつもないピラミッド・パワーを体感する。「5〜6段上がれば追っても諦める」と言うのも納得出来るぐらい、1つ1つの岩があまりにもデカ過ぎる! 1段また1段と登るにつれ、だんだん星空に手が届きそうになってくる。そんな感動に浸りながらも、疲れが激しくなってきた。
 もう20〜30分ぐらい経つが、一向に頂上が見えてこない。(そりゃ140m、ビルの40階ぐらいあるんやから・・・) 登るにつれ、徐々に岩が小さくなってきた。一瞬「ラッキー」と思ったのだが、それは大間違い。登るのが楽になったと同時に徐々に足場が無くなってきているのだ!更に下を見ると・・・

「うおぉぉぉーーーーー!!」

こんな所から落ちたら100%“死”あるのみ・・・寒さと恐怖感で足が痺れ、体のバランスが狂っていく。「安全第一」を合図に震えながら、皆必死で岩にしがみつく。
 おお、やっと頂上だ!! 劇的達成感の中、満面の笑みを浮かべ早速記念撮影大会だ。霧の闇に溶けて沈むギザの街並みや砂漠を見下ろし、隣に聳えるカフラー王ピラミッドの微かな寝息に耳を傾ける。下界からは想像も出来ないような幻想的な世界が、今、我々の目の前で回っている・・・

 空がうっすらと白んできた。星たちが彼方へと溶けてゆき、東の空から液体のような光が徐々に湧き上がり、森羅万象を白く染めてゆく・・・ ピラミッドの頂上で、しかもこの達成感に浸る中で向かえる“日の出”である。シビレない訳が無い!! 年明け早々こんな体験が出来、「何か今年はイケそうやなぁ!」と心の中で確信し、一同マグスート(満足)しまくっていたその時・・・・・・!
 下界を見下ろすと我々の下山ルートは既にポリスに囲まれていたのだった。何ということだ!!“袋のネズミ”とは正にこの事?!

 さて絶体絶命のピンチを迎えたよねっち登頂隊、この後の運命は如何に・・・



5段目ぐらい
(昼間)

ピラミッドの頂上
(日の出前)



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よねっち紀行 エジプト編 Vol.2